大切な我が子に初めてフッ素入り歯磨き粉を使用するとき「フッ素って、身体に悪くないのかな?」「飲み込んでしまってもいいのかな?」などとご心配になられる方もいらっしゃるでしょう。
フッ素とは、特殊な成分なのでしょうか。2児のママであり歯科衛生士でもある私が、子供にふさわしいフッ素入り歯磨き粉の適切な使用量や、そもそもフッ素とは何であるのか?といったことをかみ砕いてお話しいたします。
・フッ素は危険な成分なのか、そもそもどのような成分なのか
・フッ素入り歯磨き粉の適量の目安
・1500ppm高濃度フッ素入り歯磨き粉は何歳ごろから使用できるのか
子供にとってフッ素入り歯磨き粉が危険ではないと言える理由
実は、歯科衛生士である私自身も、自分の子供に初めてフッ素入り歯磨き粉を使うとき、ちょっと戸惑う気持ちはあったのが正直な本音です・・・。
初めてのお子さんに、フッ素入り歯磨き粉を使用されるという方にとっては「フッ素のことをいろいろ調べた上で安心して使いたい」と言う方は多いのではないでしょうか。
そうなのよ、フッ素って危険なイメージがあって、なんだか心配。
いつごろから子供にフッ素入り歯磨き粉を使っていいのかも、よく分からないし・・・。
フッ素のことをいろいろ知った上で、安心してから子供さんに歯磨き粉を使っていきたいですよね。
では、花子さんの質問に1つずつお答えしていきましょう。
ご自身でフッ素について調べれば調べるほど、フッ素入り歯磨き粉を使うことに不安が出てくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言いますと、フッ素入り歯磨き粉は適量を守れば安心して使えます!
フッ素入り歯磨き粉が子供にとって危険であるのかどうかを知るために、まずは「そもそも、フッ素とは何であるか?」を知ることが必要です。以下にフッ素とは何であるのか?ということを、ご説明いたします。
フッ素とは自然界にも存在する栄養素(元素)の一種であるから
フッ素とは、自然界にも存在する天然の元素のことです。
フッ素は「フッ素化合物」として他の元素と結びついた形で存在しており、ミネラル成分の1つです。
以下に例を挙げていきますね。
- お茶の葉
- 塩や砂糖など調味料
- わかめなど海藻類
- 水道水
などなど、挙げ出すとキリがないほどに私たちが日常生活を送っていく中で、ごくごく自然に身体の中に取り込んで摂取しているもの、それが「フッ素」なのです。
ちなみに、母乳にもフッ素が含まれていると言われていますよ~。
適量を守ればフッ素は決して恐い成分ではないから
フッ素は食塩の同様の成分であると覚えておくと、フッ素のことをシンプルに理解できます。
こんな風に覚えておくとよいのでしょう。「フッ素は適量を使用する分には問題なく、むしろ薬になる。しかし、取り過ぎると毒になってしまう」まさに食塩と同じ感じの立ち位置ですね。
フッ素は、むし歯予防に優れている成分です。小さいむし歯の部分にカルシウムの結晶を作って、初期のむし歯を治す手助けをしてくれる「再石灰化作用」という働きを持っていますし、酸に負けない強い歯(耐酸性)を作ってむし歯菌から歯をコーティングしてくれる「抗菌作用」も期待できるんですよ。
フッ素はうまく使うが吉です。ここでポイントなのが「適切な使用量を知り、守る」ということです。
フッ素が歯にいいからといって、大量に摂取すると身体に影響を及ぼすこともあります。(大量に食べると身体に悪いのは、どのような食べ物でも一緒ですけれどね・・・。)
以下に、子供にとって適した歯磨き粉の使い方や、フッ素の使用量を記載しましたので、一緒に確認していきましょう。
6歳未満のフッ素使用について | WHOの興味深い見解
フッ素入り歯磨き粉の適量を紹介する前に、ここでWHOの興味深いデータをご紹介します。
1994年にWHO(世界保健機関)が、テクニカルレポート(Series No. 846、Fluorides and Oral Health)で「6歳未満の子供に対してフッ化物洗口法は推奨されない」との見解を示したデータがあります。
参考:「就学前児童のフッ化物洗口法についてのWHO見解」(日本歯科医師会)
詳しくは上記の記事に記載があるのですが、要するに「6歳未満の小さな子供がフッ化物洗口法を行ったときに、誤って全量を飲み込んでしまう恐れがある。それが一定期間続いたら、フッ素症を誘発させる可能性があるよ」といったデータでした。
ちなみにフッ素症とは、歯の表面に不透明な白濁・縞模様などができてしまったり、重度のケースでは四肢麻痺が起こる運動障がいが出てしまったりする恐れがある疾患を指します。
「フッ素の大量摂取で、運動機能に障がいが出るの?!」とびっくりされる方も中にはおられるかもしれません。
しかし、日本で普通に過ごしていて、適量の歯磨き粉を使用しているレベルでフッ素症になってしまうことは非常に考えにくいです。
なぜならば、上記で紹介したWHOの報告は「フッ化物洗口液を、全量・かつ毎回飲み込むと仮定したときに歯のフッ素症になる可能性」について論じたデータであるので、私たちが住んでいる日本においては非現実的なデータであると言えるからです。
そもそも、フッ化物洗口したときに誤って誤飲する可能性がある3歳児の洗口は、私たちが生活する日本では推奨されていません。
また、4・5歳児であったとしても「うがい・吐き出し」この2点がきちんとできる子供、つまり日本では誤飲の心配がない子供にのみフッ化物洗口を推奨しているので、フッ素症につながるとは考えにくいのです。
なぜ、このようなデータをわざわざご紹介したのかというと、世界ではフッ素に対してさまざまな議論が重ねられている事実がある、ということをお伝えしたかったからです。
日本に住んでいて、フッ素症にかかることは非常に考えにくいのですが、念の為に一定のルールは守るようにしましょう。
以下に示したフッ素入り歯磨き粉の「適切な使用量」を記載しましたので、きちんとお守りくださいね。
子供に使用するフッ素入り歯磨き粉の適量 | 安全に使っていただける基準
子供にフッ素入り歯磨き粉を使う際は「適量を守ること」が必要であるとお伝えしました。
下記にフッ素入り歯磨き粉の適量について、安全に使用していただける量などを写真とイラストを使って解説していきます。
2歳以下の子供 | ごま粒程度の使用量
2歳以下の子供に推奨されているフッ化物濃度は500ppmとされており、使用頻度は1日1回までです。
この時期の子供はまだ、うがいや吐き出しができない子供が大半なので、フォームタイプやジェル状の歯磨き剤がおすすめです。
ちなみに私の子供に関しては、離乳食が終わる時期(1歳半くらい)から、300ppmのフッ素入り歯磨きジェルを使用して、1日1回・夜寝る前のタイミングで歯磨きをしていました。よろしければご参考にしてください。
上記のフッ化物濃度や歯磨き回数の根拠としては、厚生労働省のデータを元に記載しましたが、ママの中には「0歳はおろか、1~2歳の子供ってうがいできるの?そのままフッ素入り歯磨き粉を飲み込んじゃうのでは?」という心配です。
切った爪程度の量であれば小さな子供に歯磨き粉(剤)を使用しても問題はない、と言われてもついつい気になってしまう方も中にはおられるでしょう・・・。
以下は、2歳以下の子供に「フッ素入り歯磨き粉を使うのは心配!」と思った方について「私だったらこうするな~」と言っ個人的な提案です。
「2歳以下の小さな子供にフッ素入り歯磨き粉を使用するのは不安」と思われる方は、子供に「お口からお水を吐き出してね~」と言ったときに、しっかりお水を吐き出せるような月齢(おおむね2歳~3歳ごろの子供さん)になってからの使用を検討されてみてもよいでしょう。
つまり、子供自身がしっかりとお口に含んだ水を吐き出せる月齢になるまでは、念のために「水のみで歯磨きをする(フッ素入り歯磨き粉は使用しない)」という提案です。
そもそもフッ素は食品にも含まれますので(お茶など)、私個人の考えとしては2歳ごろの子供にフッ素入り歯磨き粉を使用することについては、こだわらなくてもよいのではと思います。
「フッ素入り歯磨き粉を使うかどうか」で迷われるよりも、そもそもむし歯の原因になるような食品をできる限り与えず、さまざまな食品をバランスよく食べることに重きを置く方が、結果的にむし歯予防につながるでしょう。
3歳~5歳(就学前)の子供 | エンドウ豆程度(5mm以下)の使用量
幼稚園児くらいの子供でも、0~2歳以下の子供と同様にフッ化物濃度は500ppmとされていますが、使用量については若干多くても問題がないとされています。
3歳以上の子供は1日2回、フッ素入り歯磨き粉でブラッシングを行うのが理想です。(特に就寝前に磨くのが大事)この時期であれば、しっかりお口で「グチュグチュペー」ができる方がほとんどなので、フッ素入り歯磨き粉を使用してしっかりケアしてくださいね。
小学生~中学生位までの子供|歯ブラシの半分サイズ(1cm)の使用量
6歳~14歳ごろまでのフッ化物推奨濃度は1000ppmとされており、1日2~3回は歯磨きを行うのが理想です。
ちなみに、この時期であればだんだん1人磨きができてくる年頃になりますね。余談ですが、保護者の方が行う仕上げ磨きは小学校3年生ごろまでは継続して続けて欲しいです。
たまに幼稚園くらいの年齢の子供でも「子供自身に歯磨きを任せている」ときっぱり言われる保護者の方がいるのですが、残念なことに、ほぼ全員の子供さんが磨けていません・・・。
過保護かもしれませんが小学校3年生ごろまでは、夜寝る前の1回でいいので仕上げ磨きを行っていただきたいと切に願います。
1500ppmのフッ素入り歯磨き粉を使用してよいのは15歳以上
1500ppmのフッ素入り歯磨き粉を使用してよい具体的な年齢は、高校生あたり(15歳以上)からとされています。
2017年より、厚生労働省から上限1500ppm(0.15%)のフッ素入り歯磨き剤が許可されました。
それまでは1000ppmまでがフッ素入り歯磨き粉の上限だったのですが、やはり「より高濃度のフッ素入り歯磨き粉の方がよいのでは?」と思われる保護者の方も多いでしょう。
しかし、6 歳未満の子供は1000ppm以上のフッ素入り歯磨き粉の使用は控えるようにしてください!また、フッ素入り歯磨き粉は子供の手の届かない位置に置いておくのがベターです。(誤飲を防ぐため)
まとめ
フッ素は自然界に存在する元素の1つで、私たちが自然に摂取している食品類や水道水にも含まれているほど身近な存在です。
フッ素入り歯磨き粉をしようする際は子供の年齢に応じた回数と量、フッ化物濃度を守れば安心してお使いになれますし、むし歯予防効果も期待できるのでうまく取り入れましょう。
2017年からは1500ppmが上限となりましたが、6 歳未満の子供については1000ppm以下のフッ素入り歯磨き粉を使うようにしましょう。